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不可能を可能にする。
言葉にするのは簡単だが、
実際はそうはいかない。
「真空チタンタンブラー」も
まさにそんな技術だった。
ステンレスよりも硬いため、
成形しようとすると
チタンはすぐに割れてしまう。
世界で初めて
製品化を実現させた成因は
何だったのか。
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はじまりは、二人の雑談
軽量で耐久性が高く味が変わりにくいチタン素材。
SUSが展開するブランド「SUSgallery」の
真空チタンタンブラーは、真空二重構造により高い保冷力と保温力を実現。
結露しないため実用性にも優れ、特徴的な外見は見る者の美意識に訴えかけてくる。
真空チタンタンブラーの開発は、二人の製造工程責任者の雑談から始まった。
「中空(二重構造の中に空気が入っている状態)のチタンタンブラーは作れるが、
これを真空仕様で実現できたら『世界初』の製品になる。なんとか実現できないだろうか…」。
試作を重ねる日々は続いた。
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カタイのは、チタンか、信念か
チタン加工の難しさは、ステンレスの比ではなかった。どうすれば素材を割らずに加工することができるのか。
表面仕上げのコントロール、安定した真空品質…。試行錯誤が続く中、職人たちの魂にも火が灯る。
真空チタンタンブラー完成への想いは、やがて全社共通のものになっていった。
「技術課題の解決に取り組む中で、多くの新たな発見が私自身を成長させてくれました。」と
製造工程責任者の一人は語る。そしてついに職人たちの努力は結実する。
真空チタンタンブラーが完成。
もう一つの課題だった効率的な製造方法も確立することができた。
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技術の先に現れた美しさ
開発に関わった者たちが意図しなかった出来事も起きた。真空チタンタンブラーの表面に現れた独特の美しさ。
これは、SUSが表現したかった「技術と芸術の融合」が達成された瞬間でもあった。
デザイナーがデザインしたのではなく、職人の技術からにじみ出てくような美。
機能美と芸術性が融合し、単なる工業製品と一線を画すレベルにまで完成度を高めることに成功したのだった。
2010年に横浜で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)。
参加各国の首脳への贈答品としてSUSの「真空チタンタンブラー ミラーシリーズ」が採用。
また2015年、英国のウィリアム王子来日の際には、
贈答品として「タイタネスタンブラーマルティプル(S) ミラー・アンティークゴールド」のセットが贈答された。
日本の技術と美意識の結晶のような真空チタンタンブラーは、世界中で愛用されている。
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